TEPS 33rd

講演概要

コロナ禍における障害者支援 ―発達障害児を中心に―

立松 英子 (東京福祉大学 社会福祉学部 教授)


コロナ禍によって、突然日常の流れが滞った。しかし、支援の現場は逞しく、この困難に対応する様々な工夫を凝らしていた。なかでも、ネットワークの意義は大きかった。WEBでは支援のためのコンテンツが提供され、支援者たちは、ネットワークを駆使して本人や家族を支えた。

テクノロジーは、多様性の溝を埋めるのに役立っている。たとえば、携帯電話に複数の感覚に応じるインターフェイスが装備されていれば、盲者と聾者の会話が成り立つ。社会的障壁が解消され、情報共有の可能性が広がることがある。一方、知的障害や発達障害の場合は事情が異なる。これらの人々の不自由さは周囲に伝わりにくく、その表現は誤解を呼びやすい。ニーズは誰かが代弁することが多いが、時に家族でさえも理解が難しいことがある。ルーチンが崩れた時には、周囲と折り合いをつけることも難しくなる。

こうした特性から、これらの人々は虐待に晒されやすい。世界的にもコロナ禍による虐待の増加が懸念され、WHOやユニセフがメンタルヘルスに注意喚起を促した。特にアンガーコントロールの情報提供はタイムリーだった。怒りを鎮める方法が動画で配信され、本人、家族を問わず利用されていた。

学校が休校となった余波で、放課後等デイサービスは突如春休みバージョンに入った。通常放課後に来所する子どもたちが、朝からいるようになったのである。感染予防対策に追われ、支援の準備に必要な時間も乏しかったが、閉所はできなかった。医療関係者の子どもを預かるなど後方支援の場でもあったからである。さらに、感染を避けて家にいる子どものために在宅支援の役割も求められた。人手が少ない中、それらを両立させたのは、オンラインの生配信型プログラムであった。

テクノロジーによって、障害者を支える支援者が楽になれば本人も楽になる。支援者を支援するという考えは、コミュニケーションが難しい人々には大きく貢献するといえる。

コロナ禍での聴覚障害者

長谷川 洋 (NPO法人全国文字通訳研究会 理事長/NPO法人日本聴覚障害者コンピュータ協会 顧問)


コロナ禍は、聴覚障害者のコミュニケーションや活動に大きな影響があった。マスクをして、離れてコミュニケーションを取るというのは、聴覚障害者のコミュニケーションを大きく妨げてしまう。手話や読話など視覚的なコミュニケーションをしている人たちは、マスクで口形、表情を読み取れなくなる。難聴者のように音声を聞くことを大切にしている人たちは、マスクで音声が歪み、距離をとることでさらに聞こえにくくなる。コミュニケーションが成立しにくくなると、交流や活動が難しくなる。

聴覚障害者がコロナ感染の疑いがある場合の情報保障では、遠隔での手話通訳などが利用できるようになってきた。東京の場合、手話通訳だけで文字での情報保障が利用できないなどの問題があるが、こうした遠隔情報保障は、今後もコロナ感染だけではなく、広く利用されていくべきであろう。

一方、ウェブ会議用ソフトがいくつか利用できるようになり、情報保障が付いた形であれば、聴覚障害者も同等に参加することが可能であることがわかった。これは、交流などを目的とする集まりでも利用可能であるが、利用できない環境の人もいるので、リアルの集まりとハイブリッドで行うなど配慮が求められる。

役員会など、参加者全員がオンライン会議参加の環境にある場合は、情報保障を付ければ、非常に有効である。特に全国組織で役員が各地に散らばっている場合、居住地に関係なく同等の参加が可能となる。リアルの会議とうまく組み合わせて行うことで、より充実した会議の展開が可能となろう。

また参加者が100人を超えるような研究集会についても、全国から参加者がある場合、オンラインでの集会は、移動の必要がないなど参加の敷居が下がり、参加者は大幅に増えた。ただ、参加者の顔が見えなかったり、討議などが散漫になりやすいなど、今後工夫を要する問題点も見えてきた。

視覚障害者のオンラインコミュニケーションの課題と期待

三宅 洋信 (東京都立久我山青光学園 主幹教諭)


「新しい日常」と言われるようになり、リアルタイムでオンラインでのコミュニケーションを図る必要性が増えつつある。視覚障害者にとって、物理的な移動が課題になることがあるので、自宅などの自分の慣れた環境で、物理的移動をすることなくコミュニケーションができることは利便性が向上すると期待できる。また、資料がデジタル化され、自身の端末で利用できるメリットは大きい。

一方、現段階のオンラインツールを用いたコミュニケーションには、アクセシビリティと情報を認識する面の課題を乗り越える必要がある。アクセシビリティの面での課題は、視覚障害者が画面全体の情報を同時に把握できないために、ソフトウェアによる操作性や画面レイアウト、動作が大きく異なることへの対応が困難なことである。

情報を認識する面での課題は、オンラインでのコミュニケーションの大半は視覚を用いて判断することを前提としているため、集団全体の様子や雰囲気を感じ取ること、相手を模倣すること、資料や教材を触覚からイメージを構成することが困難なことにある。具体物をいろいろな向きから触って得る情報量を、音声情報のみで理解することに苦戦している状況がある。

オンラインにおいて、これまで直接手添えなどで模倣を支援していたことを、伝えられるようになることで学習の質が向上していく。また将来、オンラインでのコミュニケーション方法として、ウェアラブルな機器からの情報を活用したり、3D表現を迅速に立体表現に変換できたりする技術が利用できることで、オンラインにおける視覚障害者の情報認識が向上すると考えている。


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