TEPS

スポーツの臨場感をすべての人に ―― リアルタイム音声認識が支えるユニバーサルなコミュニケーション

岩田 佳子

株式会社リコー
デジタルサービス事業本部 プラットフォーム企画センター ユニバーサルコミュニケーションサービスグループ

近年、音声認識技術は大きく進歩しており、リアルタイム性や認識精度、多言語対応がこれまで以上に向上してきています。こうした技術の発展は、誰もが同じ情報を同じ瞬間に受け取れる「ユニバーサルなコミュニケーション」を実現するうえで重要な役割を果たしており、2025年のデフリンピック開催によりスポーツ領域での情報アクセシビリティへの関心も一層高まっています。

一方で、スポーツ観戦の多くは音声情報を前提として設計されており、聴覚障害のある方が試合の状況や臨場感をリアルタイムに得にくいという課題があります。実況やアナウンスに依存する情報は、耳からの入力が難しい環境では十分に伝わらず、同じ場にいても体験に差が生まれてしまうというのが現状です。

リコーグループは、「人を愛し、国を愛し、勤めを愛す」という創業の精神「三愛精神」に基づき、SDGsが掲げる「誰ひとり取り残さない社会」の実現に向けて、聴覚障がい者向けコミュニケーションサービス「Pekoe(ペコ)」の開発と普及に取り組んでいます。こうした姿勢のもと、Pekoe をスポーツの現場に応用し、リアルタイム音声認識によって観戦時の情報格差を緩和する取り組みを進めてきました。

本講演では、本来は職場でのコミュニケーション支援を目的として生まれたPekoeが、当事者の声をきっかけにスポーツの現場でも活用され、「臨場感をすべての人に」届ける新たな可能性を切り開いたプロセスについてご紹介します。

さらに、今後の取り組みとして、誰もが同じ瞬間を共有できる観戦環境の実現に向けた方向性についても触れ、多様な方々が参加しやすい未来のスポーツ観戦をどのように形づくっていくのかを皆さまと一緒に考えていきたいと思います。

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